上部消化官内視鏡検査での鎮静剤について教えてください。
【鎮静剤を用いた検査は現在実施しておりません】
楽に胃内視鏡検査を受けたいから麻酔をかけて欲しいとの要望が寄せられています。正確には鎮静剤を用います。大月市立中央病院内視鏡センターでは日本消化器内視鏡学会のガイドラインでも推奨されているミダゾラム(ドルミカムR)を用いています(文献1)。診療においては広く行われていますが、後述する危険、不便も起こりえるので対策型検診(胃がん検診)では日本消化器がん検診学会のガイドラインで推奨されていません(文献2)。そのため当健診センターでも鎮静剤を用いた胃内視鏡検査は実施しておりません。
鎮静剤使用のメリットとデメリット(リスク)を説明します。鎮静は受診者の不安や不快感を取り除き、内視鏡医にとっても検査の完遂率を上げるのに有用です。しかし呼吸抑制、循環抑制、徐脈、不整脈、前向性健忘(鎮静後の記憶をなくす)、脱抑制(衝動や感情を抑えられなくなる)、しゃっくりなどが起こる可能性がごくわずかにあります。
また、検査後には車両等(自動車、原動機付自転車、自転車など)の運転はできません。鎮静作用が残り、道路交通法第六十六条の定める「正常な運転ができないおそれ」があるため、検査後も当日中は車両等の運転をしないでください。
鎮静や内視鏡に関して安全を図るために問診票への記載をお願いしています。
~道路交通法の抜粋~
第六十六条 何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。(罰則 第百十七条の二第三号、第百十七条の二の二第七号)
第百十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
三 第六十六条(過労運転等の禁止)の規定に違反した者(麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)第三条の三の規定に基づく政令で定める物の影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転した者に限る。)
第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
七 第六十六条(過労運転等の禁止)の規定に違反した者(前条第三号の規定に該当する者を除く。)
参考文献
- 内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版) 後藤田卓志等 日本消化器内視鏡学会雑誌 2020:62(9)、1635-1681
- 日本消化器がん検診学会対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル作成員会 対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル2017年度版 日本消化器がん検診学会 東京 2016